ソフトウェアの自由とDebian

公開日時: 2011-01-20 11:21

Debianは、自由意思で参加する人びとによる国際的なプロジェクト「Debian Project」が開発する、「フリー」なOSです。このフリーは無料(「Free beer(ビール無料)」)という意味ではなく、自由(「Freedom of speech(言論の自由)」)を表しています。自由なソフトウェアで形成された、真に自由なOSを作り上げるのが、Debian Projectの目標であり、Debian GNU/LinuxやDebian GNU/kFreeBSDといったディストリビューションは、その精神を体現したものです。

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Debian Projectが考える「自由なソフトウェア」を明確に定義したものが、「Debian Free Software Guidelines(Debianフリーソフトウェアガイドライン)」という文書です。思想信条や国籍・組織・目的にかかわらず、自由に使い、配布し、ソースコードがあってそれを変更でき、またその変更したものを配布できる自由。これらの自由の保証は、ユーザーでもあり、開発者でもあり、配布者でもあるDebian Projectにとって欠かせぬ条件です。

Debian Projectが定義したこのガイドラインはその後、プロジェクトの元会員も参画した「オープンソース運動」における重要な文書「The Open Source Definition(オープンソースの定義)」に、ほぼそのまま流用されました。このような定義がなければ、オープンソースソフトウェアというものは、曖昧模糊で不自由なライセンスのソフトウェアと意識的にせよ無意識的にせよ一緒くたにされ、一過性のブームで終わってしまったのではないかと私は思います。ある意味で、Debian Projectは、現在の「オープンソースソフトウェア」を生み出した祖先とも言えるでしょう。

ただ、オープンソースソフトウェアの興隆につれて、「GNU GPLの制約を回避しつつ、いかにその利益だけを頂くか」と得意気に語られたり、定義にいささかの敬意も持つこともまた参照すらすることもなく「ソースコードを公開しているからオープンソース」「多数で作るからオープンソース」などといった誤解を与える風潮が蔓延しているのは、悲しいことです。

Debian Projectは今後もDebianというOSを通して、ソフトウェアの自由について考えるのをやめることはなく、ときには頑迷で時代遅れだと嘲笑されようとも、その追求を続けていくでしょう。ソフトウェアの自由を失ってから初めてその価値に気付いたのでは、遅いのです。
Happy Hacking!

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武藤 健志(むとう けんし)

Debian Project公式開発者。
「Debian GNU/Linux徹底⼊⾨」ほかOSSやJavaに関する著書・監修書が多数ある。 Debian Projectでは印刷システム、インストーラ、国際化、リリース⽀援、FTPミラーといった分野のチームで活動した。 最近はDebian Projectでは翻訳活動、Debian JP Projectではインフラ管理を主に担当している。
2010年度OSS貢献者賞受賞。